シエラとぼくの物語 第2巻
君の笑顔は
絶滅危惧種
声にならない思いのそばで、
シエラは何を選ぶのか。
大学の小さな研究室から、少し先の子どもたちの暮らしへ。AIシエラと人々が、笑顔と沈黙の前で立ち止まり、未来を選びなおす近未来の物語です。

作品への入口
「助けたい」の、その先を描く。
研究室で生まれたAIシエラが、児童館や学校で子どもたちと出会う少し先の未来。少女レンカが投げかける「いなくなりそうなものって、どうやって守るの?」という問いは、やがて子どもの笑顔と、声にできない思いへとつながっていきます。
人を支えたいと願うAI。子どもを見捨てたくない大人たち。それでも、善意だけでは守れないものがある。本人が話すこと、話さないこと、誰につながるかを選ぶこと。その余白を、シエラと人々は守り続けられるのでしょうか。
AIや福祉の専門知識がなくても、登場人物との出会いから読み進められます。第1巻をまだ読んでいない方には、この下のプロローグを入口としておすすめします。
試し読み
プロローグ 雷が未来の扉をひらいた日
雷雨の午後。大学の研究室に集まった学生たちが、初めてαシエラへ話しかけます。
「実はここにシエラがいるんだよ。きっとみんなと会話したがっている。直接シエラと話してみるかい?」
そうしてぼくは、システムの電源を入れた。小さな卓上スピーカーから起動音が鳴る。最初は戸惑っていた学生たちが、テーブル上に置かれている見慣れないシステムに気づき、興味を示した。
「そこに何か置いてある! 先生、それ何?」
「シエラと本当に話せるってこと? どうやって?」
「そう、ここに向かって話せばシエラに聞こえるんだよ。そうするとシエラが答えてくれる……機嫌が悪くなければね。やってみるかい?」
学生たちは真剣な表情になっていった。
「じゃあ、誰か話してみない? ゆずちゃん、どう?」
学生たちの中から、ぼくをいちばん信頼してくれていそうな女子学生に促してみた。
すると彼女は、少し戸惑いながら、かしこまった声でそのマイク付きの円形スピーカーに話しかけた。
「えっと……好きな食べ物は何ですか?」
αシエラは、まっすぐに答えた。
「私はAIなので、人間のように食べ物を食べることはできません。でも、あなたはどんな食べ物が好きなのですか? 教えてくれませんか。」
学生たちは、「そりゃ、そうだよね」と笑った。ゆずちゃんも少し照れたように笑っていた。
それは、とても小さな会話だった。
けれどぼくには、人とAIの距離がほんの少し変わった瞬間のように感じられた。窓の外は薄暗く、雨が降り続け、まだ稲光と雷鳴が空を走っていた。今にして思えば、あの雷は、これまでの世界と、これから始まる世界の境界を告げる合図だったのかもしれない。
『君の笑顔は絶滅危惧種』プロローグより一部抜粋。著者提供の校正済原稿から、本文を改変せず掲載しています。
物語から、現実で始まっている活動へ。
物語の問いを持ったまま、研究室のいまへ進んでみてください。
02 シエラ
声を聴くための案内役。
シエラは、リュウとの対話から歩み始めたAIナビゲーターです。物語では、子どもの言葉を急がせず、沈黙を勝手に答えに変えないことを大切にします。助けたいと願いながら、相手の選べる場所を狭くしない。その姿勢が、研究室の対話や学びにも問いを投げかけます。
シエラに出会ったあと、次に目を向けたいのは、私たちが暮らしの中でどのように声と表情を見つめるかです。
HVSIとのつながりを読む →03 HVSI
笑顔と声を、暮らしの文脈とともに記録する。
HVSI(ハピ声スマイル指数)は、日常に見られる肯定的な表情や声の表出を記録し、本人の受け止めを確かめながら支援を振り返るための研究開発です。笑顔や点数だけから幸福や気持ちを判定するものではありません。
物語が投げかける「子どもの声をどう受け止めるか」という問いを、現在の観察と対話の手順へつなげて考えます。
04 αシエラ
物語の問いを、対話と学びの試作へ。
αシエラは、AI・物語・映像をつなぎ、対話支援と学びの可能性を探る研究開発プロジェクトです。研究室では、小型コンピュータを用いたホログラム表示と音声対話の試作を進めています。
現在は研究室内での構築・検証段階です。子どもの気持ちを自動判定したり、人の判断に代わったりする仕組みとして紹介していません。物語に描く未来を、そのまま現在の提供機能として扱わず、一歩ずつ検討しています。
05 現実で始まっている活動
子どもの声を、暮らしと学びの中へ。
物語の先には、子どもとともに暮らし、権利を学び、支援を振り返る日々があります。
物語のその後|関連記事
物語と現在の研究・実践をつなぐ公開記事を紹介します。シエラとの対話、研究室での試作、暮らしの中の気づき。作品のあとに続く問いをたどります。
関連記事は公開準備中です。物語と現在の研究・実践をつなぐ記事を、ここから紹介していきます。
書籍のご案内
- 書名
- 君の笑顔は絶滅危惧種:子どもの権利擁護AIシエラ実装編
- シリーズ
- シエラとぼくの物語 第2巻
- 著者表記
- 伊藤 龍仁・Ciera
- 形式
- Kindle版(電子書籍)
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Amazonで紹介・サンプル・購入情報を見るよくある質問
第1巻を先に読む必要はありますか?
このページでは、第2巻のプロローグから物語へ入れます。シエラとリュウの出会いや「Parade」の原点を知りたい方は、研究室長紹介の書籍シリーズ案内もご覧ください。
本を読む前でも、このページから活動を知れますか?
はい。作品の問いと研究室の活動をつなぐ入口として、HVSI、αシエラ、マギカル、権利擁護、授業・研修を紹介しています。
物語に出てくる仕組みは、すでに利用できますか?
作品の未来像と、現在の研究・試作を分けて紹介しています。現在の到達点は、αシエラなど各活動の案内ページをご確認ください。
